2018年10月19日金曜日

ミシンの寿命

今、俺のミシンで製造年の古いミシンは昭和36年生だ。

今年は平成30年、西暦2018年。つまり今年で57歳となるのか。アラ環だ。

おそらくこのおっさんミシン(ジャノメTA-761)は優に60年はいき続けるだろうし、たぶん俺よりも寿命が長いのではないかと確信めいたものを感じずにはいられないこのごろだ。俺のほうがはるかに後輩なんだが。

もちろん、機械なので動かしてナンボで、いつか使わなくなってミシンに纏ったオイルが酸化し、タール状から可動部分までキャラメル状に変化したら正真正銘の固着であり、そうなったときは無知な人が見たらただのごみにしか見えないだろう。もしそうなったとき、つまり、俺が病に倒れるか、ボケ出してミシンどころではなくなるとか。

オーバーホールが楽しみだというよほどの変わり者か修復専門家の手にゆだねられなければならないし、彼らの腕次第では・・・考えたくはないが別次元の新たな問題に直面するのかもしれない。

図書館の書庫に収蔵されていた、借りて読んだジャノメ社史によると、大正時代にシンガーミシンの販売戦略で下取りしたイギリス、ドイツやイタリア、スイスなどのミシンはことごとく焼いて再生できないようにしたらしい。

つまり、自前シンガーミシンをはびこらせるために競合を根絶やしにしたのだ。明治末期や大正期に諸外国のミシンが国内を流通していたのにも驚いたが。そんな今あれば貴重な資料になったろう、大量のミシンが木っ端微塵に砕かれたわけだ。

また、大阪、東京などへの空襲で家庭で使われていたミシンが数十万台焼けたといわれているそうな。あぁぁぁぁぁぁ、もったいない。

いずれにしても人為的災害であり、本来ミシンのもつ役割としての天寿ではなかっただろう。ミシンにすればなんと、無念だったろう。

今、近々戦争が起こるという緊迫した世情は感じないし、一部の有力メーカーが独占台頭するなどと考えにくい。どこも50歩百歩だ。未曾有の自然災害でこの国が滅ぶとは、まさかそこまではないだろう。(と思いたい)

ミシンは、本当のところミシンとして生まれてきたからにはその役割と使命があるはずで、できるだけ大切に使われて人々の幸福に寄与することが本望のはずだ。そう簡単に捨てられたりされるべきものではないはずだ。

アパレルメーカーにとってミシンは製品を生み出す道具であって、消耗品、償却品ととらえられているのかもしれないが、工業用だって家庭用だってミシンであるからにはその基本は同じだ。よく知らないが、工業用ミシンは家庭用ミシンとは違う、消耗度合いではなかろうか。もちろん家庭用も消耗するが。

俺のミシンは少なくとも60年(あと3年)は無事故だろう。深刻な病気・故障とも無縁だ。おそらく今の保守クオリティを保てばあと数十年は余裕だ。その証に今のシンガーミシンで100年前のものが現存しているのがあると聞く。youtubeでも普通に映像を見ることができる。

鉄は錆びるが鋳物合金は錆びない。正確には、鋳物合金も錆びるが金属内部まで浸透しないで表面だけが酸化する。実感としてはその錆もさほど広がらない。ここら辺に長命なひとつの要因がある。錆びた足踏みミシンは目にするが、さびを纏うと修復もそれだけ手がかかる。これまた先にあげたyoutubeでインドかアジアのどこかで荒治療の作業風景の動画をみた。

おそらく今の日本の整備士はこれほどの作業を依頼されることや整備経験はないのではないだろうかと思うくらいドラスティックだった。

一方、新型モデルを買うと、これほど使い続けることはできないだろう。部品保有期間8年だかそこらで修理を断る(場合がある)と逃げ口上で、衝撃に弱い樹脂パーツの多用の弊害(メーカーはそれが目論見だろうが)でとてもじゃないが持ちこたえて15年くらいかと思う。

今、我が家のエアコン霧が峰(※1)は21年目をめでたく迎え、戦友の洗濯機、日立ポケット洗科(※2)も健在だ。

我が家の家電は長命なほうだと思う。まだほかにもあるが書かない。しかし、こと世間様のミシンに関しては果たしてどうだろうか。

よく、長く使えるミシンはありますか?なんて、QAでみたら「長く」とはどれだけの期間かと思えば10年とかそこらへんであって、「今のミシンで50年とか100年使えるミシンはどれですか」なんていう質問は見ない。

20年もすれば買ったとき最新型ミシンでも飽きてくるからおのずと故障して手放すか、買い換える。

俺のもう一台、蛇の目825D型。1989年生。これはヤフーで格安ジャンクを修理したもの。返し縫ボタンのタクトスイッチ部品が故障していたためパーツショップで交換部品を買い、半田付けしてみごとよみがえった。部品代35円。パチパチ。やはり故障していたので事故物件だった。

世間では故障したから新しいの買い換えようとなる。

しかし、たった35円のパーツでも、修理見積りは足元を見られる。部品を仕入れる事務作業、手数料、作業工賃が乗っかる。35円のパーツが故障原因だとたどり着くには分解60分、修理、組み立て30分、コーヒータイム20分、クリーニングプラスアルファ、実際はそれ以上の準備や片付けなどがあり、手間と時間、技能が要求されるしで修理業として商売するとなると経費と利益ともろもろが必要だ。依頼者である素人に専門工程の説明や、素人に分かりやすく専門用語を使わず簡単に分かりやすく説明するのも目に見えないサービスの一つだろう。

素人相手にわかりやすく説明して修理完了とおもったら、素人の客が、修理完了したミシンにケチをつけるなんてことはあるあるだ。

良かれとおもってやった修理にケチつけられて、やる気もなえるし、業界を支えるミシンショップの経営者は高齢化と後継問題で廃業だ。ミシン販売修理などの看板だけのシャッター店はその遺跡だ。

こんな業界だからますます体力ある企業だけが残っていく仕組みが出来上がり、そんな企業だからますます残念な世界になる。もしかしてそんな世界を打開するヒントに長寿命化があるのではないかと、そんなことを考えた。

番外編:喫茶千松のマスターが作る、絶品カツカレー(平日800円、土曜日は600円!)はもう二度と口にすることが出来ない。

※1 空調機
※2 洗濯機







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